IT企業の中途採用面接を受けて感じたこと

期せずしてアラサーニートとなって数ヶ月、海外に語学留学に行ったり自分が欲しいと思ったアプリを作ったりと悠々自適な生活を過ごしていましたが、流石に定職についてお給料を貰う生活を取り戻さないと遠い将来に生活に困窮するのでいくつかの会社の面接を受けました。

背景

略歴

IT系のエンジニアです。純粋にプログラマーと名乗って良い経歴かは微妙ですが、「プログラムを扱う事を生業にする職業」ということでプログラマーと名乗っています。
大きめなBtoCのメディアサイトの開発や、携帯関連のアプリ開発が経歴の中心ですが、それ以外に業務システムの開発やSIerとしての提案作業、某ベンダーの金融部門で技術コンサル(という名の雑用)なども行ってきました。


退職の理由

表向きの理由としては手術療養が必要なため。
裏の本音(元居た会社への不満)が無いわけでもないですが、比率的には表:裏=9:1くらいです。手持ちのお金には余裕があったので、体の療養を最優先にしてしばらく一線から退く決断をしました。


志望した業界

トラフィックを集めるサービスに興味があるので、転職活動初期はソーシャルアプリ業界中心、後期はどちらかというとエッジの効いたサービスを提供している企業をピンポイントで訪れました。



日本のIT企業の面接で感じたこと

日本のIT企業は身体的な不安に異常に過敏

私は今回身体的な事由で会社を辞め、その流れで転職活動を行いましたが、例え手術のおかげで前よりも遙かに健康になったとしても、過去に何かしら病気や手術などをしているという事実だけでかなりマイナスになる事があります。


転職活動初期に訪れた会社のうち数社では、明確に私の身体的な不安「のみ」を理由に落とされました。
転職エージェント経由で応募した会社についてはエージェント経由で落選の理由を聞くことができるのですが、落とされた理由は「過去に病気になったのでストレス耐性に不安がある」というものだけでした。


なぜそこまで身体的な健康に執着するのか・・・もちろん業務に支障をきたすレベルでは問題がありますが、過去に病気になったことがあるという事実だけを異常に気にするのは安易な気がします。実際に、病気にかかる事で自分の健康管理に気を使うようになり、病気前よりずっと体が健康になりハードワーク可能な状態になることもあります(私が実例です)


ただ、こういう評価をする会社では、劣悪な環境で長時間労働を技術者に強いる、いかにも日本企業っぽいワークスタイルが常態化している事が想像でき、かえってリトマス試験紙的に企業の見極めが行えるので良いな、と今では思うようになりました。


日本のIT企業は転職回数や退職の理由ばかり気にする

私はどちらかというと比較的転職を繰り返してきました。
最初に潜り込んだ会社が非常に低レベルであったこともあって、自分で言うのもなんですが試行錯誤と努力を重ねて段階的にステップアップをしてきた道程としての結果です。


しかし日本の場合、会社の忠誠度を気にするのか、転職の回数と、辞めた理由を非常に気にするようです。
私の場合でも、インタビューの大半が過去の会社の退職理由を根掘り葉掘り訊かれる、という事に終始してしまいます。


日本のIT企業は技術的な評価をしない

日本の多くの企業は、面接時に技術的な資質や素養の評価を行う事をしません。
ここで言う評価とは、たとえばプログラムを書かせたり、アルゴリズムを数式・擬似コード等を用いて表現したり、もしくはそれらに類似した質疑応答を行ったり、ということです。


技術者の資質というのは職務経歴書に書かれている経歴だけではとても判断できません。資質とは、一例を挙げると

  • いかに論理的思考ができるか
  • 物事の全体像や仔細の構造を的確に把握し咀嚼できるか
  • それらの断片をコンピュータサイエンスに適した形で表現する事ができるか

といったもの。

これらは経歴書を読むだけやインタビューをするだけでは把握するのは厳しいと思います。
そのことは技術者であればあるほど痛いほど理解できる訳なのですが、どういう訳か技術者をほしがっている日本のIT企業では、インタビューや、あまり意味があるとは思えない適正テストの類で評価をしようとします。


多くの面接担当者が面接者の経歴を見ていない

私も以前は面接官として面接を担当していた時期もあり、その頃の自戒を込めて書きます。

おそらく多くの会社で、技術者の1次面接は現場の技術者が担当すると思います。
よく組織が成熟している会社であれば事前にその人の経歴や、今回求めている人材像等を十分に面接官と共有した上で面接に挑むと思いますが、実情は面接の直前に面接官を依頼されたり、どんな人材が欲しいかといったイメージが曖昧なまま、面接官が面接に挑んでしまうケースが多いです。


なのでどうしても面接の時のインタビューでのコミュニケーションがその人への印象のほとんどになってしまいます。


こと技術者に関していうと、優秀な技術者の多くがブログなどで技術的なエントリーを書き、twitterなどのソーシャルツールを用いて交流をしています。また自身のページを作成して過去に書いた論文や作成したアプリなどの略歴を載せている方も居るでしょう。

そういった情報を事前に把握して見ておくことで、より精度の高い面接が行える事は想像に難くないのですが、実情は必ずしもそうなっていないと思います。


今回の経験で言うと、落選理由として「あまり手を動かしてコードを書いた経験が無い」という評価をした会社がありました。不遜ですが私の経歴書の内容を読んだり、ブログの内容を読んだらまず間違いなくそんな評価は出てこないです。


日本のIT企業に入社するのは博打

これはその会社を選ぶことが本当に良いことなのかどうか分からない、という未来の不透明性という意味ではなく、実力があってもそのスキルを測る努力を採用側が行っていないから、どれだけ力のある人でも運次第、という意味です。



外資のIT企業の面接で感じたこと

結論から言うと、上述の日本のIT企業とは全く真逆でした。


私が受けたいくつかの外資企業では、退職の理由等々は一応訊かれましたが、面接の最後の最後の方でオマケ程度でした。


とにかく多くの時間を、その人の経歴や持っているスキル、身につけた経験、仕事に対する考え方を引き出すためのインタビューに時間を費やすイメージです。
技術的な話で盛り上がりすぎて、面接とはあまり関係無い方向に技術的な議論が進んでいくことも何回かありました。


また、アルゴリズムを元にとりうる値を数式で表せだとか、この条件を満たすプログラムのコードを書けだとか、いくつかのアルゴリズムの計算量をその理由も含めて述べよだとか、そういう類のエンジニア適正を測ろうとするやり取りも多かったです。


上記のような面接だと、採用側も精緻に評価を下せるでしょうし、受けた側もちゃんと評価されたという満足感と納得感があり、例え落選しても日本の企業で感じたモヤモヤ感を感じることなくスッキリした気分でいれると思います。


次の就職先

ここまで書いた内容からすれば、まあ日本の企業に就職するという選択肢は無いよね、ということで、3月からとある外資企業でエンジニアとして働くことになりました。


日本のIT企業の採用プロセスには正直ウンザリしました。
個々の技術者には優秀な方は居たとしても、産業的に世界の中で日本のITが後進的である、そんな理由の一端が実はこういった採用プロセスにも表れているのかな、とも思いました。


もちろん類型的に日本のIT企業をダメだとは思いません。日本でも技術者視点で合理的な取り組みで技術者採用を行っている企業も沢山あります。
ただ、それは世間的なネームバリューや、会社への印象とは必ずしも一致していないな、とも感じました。


おまけ

「採用に全力を尽くす」と仰っている某企業が、少なくとも採用に全力を注いでいるようには思えません。

人事的な訓練もされておらず、取りたい人材のイメージも共有せず、そんな状態で技術的にも経験的にも未熟な現場の新卒エンジニアに面接官をやらせるのは優秀な人材を取り逃がすことと、対外的な会社のイメージダウンにつながるという意味で大きなマイナスだと思います。

個人的にはいかにも日本のIT企業的なダメな側面が前面に出るだけ、だと思います。


追記(2/9)

個人的には採用プロセスと、その会社のアウトプットは必ずしも正比例しないと思っています。
ブラックに見える企業でも目覚しい成果を出しているところもありますし、非常に配慮が行き届いているけれど成果はイマイチなところもあります。


また、技術を適切に評価しない採用プロセスも功罪?ありで、私も過去にその恩恵は受けています。ほぼ技術者として未経験で、大学でも専攻していたわけでもない私がこの業界に入れたのは、皮肉にも日本的な採用プロセスのお陰です。


あと上記記述は嘘は書いていませんが、若干煙幕を含めて事実関係が分かりづらくなっています。自己保身のためですw